その着物を前に、
「去年の会長誕生パーティーで情報操作は行われたけれど、まだ藤の精を目にしていない人たちは半信半疑。でも、翠葉がこれを着て藤の会へ行けば、翠葉が藤の精として人の目に留まることになる。これからはそういう目で見られるようになるわ。覚悟はできてる?」
 私は静かにコクリと頷いた。
「私ね、三回選ぶ機会をいただいたの。一度目は静さんから。二度目はツカサから。そして三度目は朗元さんから。最後、朗元さんと話をしたとき、もう選択をする機会は要らないって伝えたの。それは今も変わらない」
「そう……なら、付け入る隙がないくらい飾り立てましょう。藤の会にはひと癖もふた癖もある大人が大勢いるわ。大多数の人間は、会長や静が牽制してくれるでしょう。でも、ふたりがいつでも助けてくれるわけじゃない。翠葉も強くならなくちゃね」
「……はい」