翠は別段隠そうとするでもないため、隣を見れば誰から送られてきたのかも丸見えだった。
 メールは唯さんから。ディスプレイに表示されたのは、俺が翠に送るのと然して変わりのない一言メール。それに返す翠のメールもまた一言のみだった。
 そんなことに安堵する俺は、いったい何を気にしているのか……。
「ツカサ、歩きながら話そう? 唯兄がお昼ご飯を作ってくれているの」」
 俺は翠より先に立ち、いつものように手を差し出す。と、翠はその手を躊躇なく取った。
 少し前はこれだけでいいと思っていたのに、俺は今、翠に何を求めているのか――。
 不透明な心境を探りながら歩き始める。
 この手を取るのはいつでも自分でありたいと思う。そして、翠が頼る手はいつでも自分の手であってほしいと願う。
「……土曜日の藤の会、来るの?」
 藤の会でのエスコート役を買って出よう。そのくらいは自分から――。