「「「「けーいーくんっ!」」」」
 どこからともなくからかい調子の声が割り込み、声のした方を振り返る。と、四人の男子が立っていた。
「あ、おまえらステージ終わったの?」
「終わった終わった。おまえひどいよ、始まる直前にいなくなるんだもん」
「本当だよ。見つけたと思ったらこんなかわいい子と一緒にいるしさ」
「君、名前は? どこ大学? それとも高校生かな?」
 あっという間に取り囲まれ、逃げ場を失って硬直していると、
「怖がってんだろ? 少し下がれよ」
 倉敷くんが間に入ってくれた。そして、
「右から春夏秋冬」
 え……? ハルナツアキフユ?
 聞き返すように倉敷くんを見上げると、
「九条春樹くじょうはるきと夏樹なつきは双子でヴァイオリンやってる。東海林秋善しょうじあきよしはヴィオラ。遠野真冬とおのまふゆはチェロ。四人で『Seasons』ってカルテット組んでて、俺もたまにピアノで参加させてもらってる」
「春です」
「夏です」
「秋です」
「冬です」
 四方から手が伸びてきて顔が引きつる。
 でも、自己紹介されたのに無言でいるのはどうかと思うし……。
「御園生翠葉です……」
 かろうじて名前を口にすると、
「かわいいうえに名前がきれいっ! スイハってどう書くの?」
「翡翠の翠に葉っぱの葉……」
「かーわーいーいーっ!」
「春、うるせーよ」
 容赦なく夏くんに突っ込まれた春くんは、襲撃された腰を押さえてのた打ち回る。
 その様を呆然と見ていると、涙ぼくろが印象的な冬くんに二枚のチケットを差し出された。
「音楽が好きなら友達誘って遊びに来て? 慧も出るからさ」
 チケットには来週の日曜日、夕方六時開演の文字。場所は、支倉の仙波楽器ビル内のライブハウス。
 来週の日曜日はソルフェージュのレッスンのみだし、行けるかな……。
 柊ちゃんを誘ったら一緒に行ってもらえるだろうか。
「ね? 来て?」
「……はい。あ、チケット代――」
「いいよ、今回はお近付きの印にご招待!」
「でも――」
「くれるって言うんだからもらっちゃえよ。その代わり、絶対に来いよな?」
 倉敷くんに言われ、私はコクリと頷きお礼を言った。