前日と変わらずゲストルームへ翠を迎えに行くと、えらくめかしこんだ翠に出迎えられた。
 くすんだピンクのシフォン生地ワンピースに白いフード付きのコート、ボルドーのファーが上品なバッグに揃いのショートブーツ。
 それだけならまだしも、髪がきれいに巻かれており、唇には色つきのリップクリームが塗られている。
 何もしてなくても人目を引く容姿なのだから、ここまでしてかわいくないわけがない。
 そんな翠を前に言葉を失っていると、
「司くん、何か一言くらいあってもいいんじゃない?」
 翠と共に出てきた栞さんに小突かれる。
「……似合ってる」
「本当?」
「嘘なんてつかない」
 やけくその思いで口にすると、
「本当に口下手なんだから……」
 栞さんに苦笑された。
 この時点でほかの人間が出てこないところを見ると、家族は仕事か何かで不在なのだろう。
 今この場に唯さんがいないことに胸を撫で下ろしつつ、こんな格好をした翠を大学の学園祭へ送り出すことに抵抗しか覚えない。
「司くん、わかってると思うけど、安全運転でね?」
「はい」
「じゃ、栞さん、いってきます!」
「うん、楽しんでいらっしゃい」