合同の打ち上げとは名ばかりで、三組合同の打ち上げ感はゼロに等しい。そんな組ごとの打ち上げを壁際から傍観していると、同じクラスの人間がちらほらと声をかけにやってくる。
 一年のころにはなかった現象。
 同情の目で見られた去年の紅葉祭よりはまだましか……。
 今まで俺に絡んでくる人間といえばケンと朝陽、優太くらいなものだった。けれど、今となっては単なるクラスメイトも普通に声をかけてくる。
 自分がそこまで変わった気はしない。そこからすると、取り巻く環境の変化に付随するもののような気がする。
 そんなことを考えつつも気になるのは翠のことで――。
 右前方に集まっている赤組を見れば、翠はパイプ椅子に座って談笑していた。
 誰かが気を利かせたらしく、翠の膝には法被が掛けられている。それによって、足の怪我は目に付きづらいものとなっているが、翠の方を見てひそひそと話す人間は少なくない。
 目撃者もいたわけだから、噂になるのは時間の問題だろう。
 そしたら、翠はまた傷つくだろうか……。
 さっきの様子だと、間違いなく落ち込みはするんだろうな。
「紅葉祭のときもそうだったけど、司の視線はいつだって翠葉ちゃんを追ってるよね? そっちの趣味はないけどちょっと嫉妬しそう」
 飲み物を持ってきた朝陽が絡みつく。
「ホントホント。付き合いが長い俺たちのことなんて、これっぽっちも気に掛けてくんないんだからさ」
 ケンまで絡んできた。
 ふたり同時に肩を組まれると異様に重い。
 文句を言うと、優太まで面白がって絡む始末。
「翠葉ちゃんの足、結構ひどいんだって?」
 無言で頷くと三人がちらりと翠の方へ視線をやり、
「湊先生に診てもらった?」
「いや、帰宅したら兄さんに診てもらう」
「なんでまた……」
「タイミング逃した」
「は?」
「姉さん、ほかの生徒に付き添って病院へ行ったあとだった」
「なるほど。打ち上げは最後までいるの?」
「いや、七時に抜けるからあとのことを頼む」
「了解」
 どうしてか、三人は満足そうな表情で去っていった。