栞さんが丁寧にテーピングや湿布に水をかけ始めると、
「昇……これ、骨までいってないわよね?」
「ま、歩けてんだからいっててもヒビくらいじゃね? 実際のとこは剥がしてみねえことにはなんともな」
 なんて物騒な会話だろう……。
 ここにきてひどくなる痛みと、明るいところでまじまじと見た自分の足の太さに嫌な展開しか想像できない。
 完全に湿った湿布をはがし始めると、文字通り、骨に響くような痛みを感じた。
 湿布に隠れていた皮膚が見えると、
「こりゃまた派手にやらかしたな」
 それが昇さんの第一感想だった。
「何がどうしたらこんなになんだか……」
 私が何も答えずにいたら、ツカサが代わりに答えてしまう。
「翠に嫉妬した女子が階段から突き落としてこうなった」
「そりゃまたえらい目にあったな……。ま、予告なく突き落とされたらこうもなるか。ちょっと触るぞ」
 前置きをされただけで身体が逃げてしまう。しかし、その動作ですら痛い。
「翠、少しの間我慢しろ」
 その言葉に思う。そうか、我慢とはこういうところでしなくちゃいけないのか、と。
 それを悟ったのか、ツカサは億劫そうに口を開き、
「昇さん、とっとと診てやってください」
「はいよ」
 昇さんは本当に少ししか足に触れなかった。というよりは、短時間ですばやくチェックしてくれたという感じ。
「明日、病院行ってレントゲンな」
「えっ?」
 そこまでしなくちゃだめ……?
「骨がポッキリいってるわけじゃないが、ヒビくらい入っていてもおかしくない。確認の意味も含めてちゃんと診たほうがいい」
「はい……」
「病院に連絡入れとくから救急センターのほうへ行きな。そしたらすぐレントゲンに回してもらえるようにお願いしておく」
「ありがとうございます……」
「あとは鎮痛剤の選択かな?」
 楓先生の言葉に、
「あぁ、そっか。翠葉ちゃんの胃袋は涼さんの管轄だからな。下手なもの飲ませて胃にきたらあとが怖えぇ……」
 昇さんはすぐに携帯を取り出し涼先生に確認を取ると、薬の種類や飲み方を教えてくれた。