手洗いうがいを済ませると、私は一度自室へ戻りルームウェアに着替えることにした。
 いつもなら迷わずワンピースに手を伸ばすけれど、足を見てもらうのにスカートというわけにはいかないだろう。
 クローゼットを開くと、先週蒼兄が買ってきてくれたモコモコのパーカとセットのショートパンツが目に入った。
「セットアップになっているしちょうどいいかな?」
 制服とドレスをハンガーに掛けるといつもの調子で歩きそうになる。けど、右足を踏み出した瞬間に多大な後悔が押し寄せた。
「痛い……」
 この時点ですでに足を動かすだけで顔をしかめる程度の痛みに変化していた。
 もしかしたら、自宅に帰って来たことで気が緩んだのかもしれない。
 リビングへ行くと楓先生にソファを勧められ、ソファに座った状態で診てもらうことになった。
「テーピングと湿布剥がすぞ?」
 昇さんに言われてコクリと頷く。でも、正直触れられるのも怖ければ、自分の足の変化を見るのも怖い。
 たぶん、時間が経つにつれて内出血はひどいことになっているだろうし、ぴったりと貼られたテーピングや湿布をはがす際の衝撃も恐ろしい。
 そっと自分の足を見下ろすと、右足は思ってもみないほど太く――否、腫れていた。
 その足を見た昇さんは、
「楓、洗面器に水」
「了解」
「え……?」
 意味がわからず昇さんの顔を見たものの、昇さんは右と左の足をじっと見比べたまま。代わりに、栞さんが説明してくれる。
「こういうのは乾いた状態で剥がすよりも濡らしてから剥がしたほうが肌にかかる負担が少ないの。それに、湿らせてから剥がすほうが最小限の力で剥がすことができるから、患部にも響きづらいわ」
「そうなんですね……」