あの三人の進路がどうなってしまうのか、あの三人が今どんな気持ちでいるのか――。
 意識を野放しにしたら延々と考え続けてしまいそうだ。
 でも、少し考えるだけでブルーになるし、結果を知ったらもっと気持ちが沈むだろう。だから、もうここで終わりにしたい。今日で終わりにしたい。
 ツカサとこんなふうに言い合いになるのもいやだよ……。
「ツカサ、お願い……。もう、終わりにしたい。これ以上考えたくない」
 そっと視線を落とすと、力いっぱい握り締められたツカサの手が目に入った。
 何を思うでもなくその手を取り、両手でゆっくりとほぐしていく。
 左手が終わったら右手。右手が終わったら両手を取り、
「打ち上げ、桜林館で合同なのでしょう? 行こう? 団長がいなかったら黒組の人たちがっかりするよ」
 ツカサを引っ張るように廊下を歩き出すと、
「翠、携帯見せて」
「え?」
 言葉は聞こえていたのだけど、あまりにも話が飛躍した気がして訊き返してしまった。すると、すかさず動いたツカサの手によってショルダーに入っていた携帯を奪われた。
「……手が熱いと思ったら発熱してるし……」
「嘘……」
「ほら」
「三十七度五分――」
 ディスプレイに反映される自分の体温を見つつ、
「去年よりは低いね」
「インフル発症して入院した去年と比べるとかどんな神経?」
「それもそうね……。今回は純粋に疲れかな?」
 なんとなしに口にすると、
「倦怠感は?」
「少し……。でも、身体を動かすのがひどく億劫という感じではない」
「……打撲や捻挫からも発熱することがある」
「そうなの……?」
「明日の藤山はやめておこう」
「えっ!? それは嫌っ。紅葉は見たいっ」
「わがまま」
「わかってる」
 ツカサは呆れたような表情で、
「打ち上げは途中で抜けよう。今日は兄さんが家にいるから」
「え? それなら湊先生に診てもらえば――」
「さっき姉さんに連絡入れたらほかの生徒に付き添って病院行ってるって」
「そうなのね……」
「兄さんにはもう連絡入れたから、兄さんに診てもらって明日動いてもいいか判断を仰ぐ。それでいい?」
「はい……」
「じゃ、おとなしく運ばれて」
 言われて素直にツカサの首へ腕を回す。と、不意打ちで「ちゅ」とキスをされた。
「もう……今日だけだからね?」
「ならもう一度だけ……」
 言われて二度目のキスを受けた。