クラスへ戻ると、半数くらいの女子が着替えの最中だった。
 私も自分の席へ戻って椅子に座りながら着替える。
 制服に着替えたら、クラスメイトにも気づかれてしまうだろう。
 さて、尋ねられた際にはなんと答えるべきか……。
 考えても考えてもいい案は思い浮かばないし、そろそろエネルギー不足なのか、脳が「考える」という動作自体を拒否し始めている。
 そんな中、生徒会の放送が入った。海斗くんの声で、
『女子の皆さん、身支度済みましたかー? あと五分で教室から出てくださいね。警備員が鍵を閉めて回り始めます』
 その言葉に慌ててドレスを着替えた。
 一番最後に教室を出れば気づかれないかな、などと思っていると、
「御園生さん、その手と足……どうしたの?」
 香月さんに見つかってしまった。そのあとは芋づる式のようにあれよあれよとクラスメイトが群がってくる。
「ワルツの前、佐野くんがいなくなったり谷崎さんが翠葉ちゃんのバッグ持って戻ってきたり、何かあるとは思ってたけど、それ、どうしたのっ!? 谷崎さんに何かされた?」
 美乃里さんに詰め寄られ、
「違うっ、違うよ。谷崎さんは何も悪くない。むしろ、このテーピング施してくれたの谷崎さんだし……」
 美乃里さんは私のことを心配してくれているのだろうし、周りにいるクラスメイトだって好奇心で訊いているわけではないだろう。
 この怪我が自分の不注意によるものなら言葉を濁す必要はない。でも、第三者が絡むこととなれば話は別。
 どんなに心配してくれているのだとしても、やっぱり話せるものではない。
 ――……あれ? 第三者が絡むのなら話は別……?
 ということは、絡まない部分は別に問題ないということ?
 頭の中にふわふわと漂う疑問を捕まえ、きちんと文章を組み立てる。