チークダンスが終わると、余韻に浸る間もなく次の行動へ移る。すなわち、打ち上げだ。
 紅葉祭のときはクラス単位での打ち上げだけれど、紫苑祭においては三学年合同の打ち上げになるため、場所は学校が提供してくれるのだ。
 ただし時間は限られており、八時までには完全下校がお約束。
 そのため、紫苑祭のプログラムがタイムテーブルどおりに進むよう、実行委員並びに体育委員は緻密なプログラムを製作し、その通りに進行できるよう最善の努力をする。その甲斐あって、予定時刻より早くに紫苑祭は終わったし、時間前倒しで後夜祭を開催することができた。
『着替えが済んだら組指定の会場へ移動してください。会場の割り振りは電光掲示板に表示してあります』
 生徒会の指示にみんな掲示板を見て即座に移動を始める。とはいえ、男子は桜林館で着替えを済ませるので、あちこち移動に追われるのは女の子のみ。
 そいえば――。
「ツカサ、私たちも生徒会メンバーなのに何もお仕事してない」
「基本、姫と王子は免除される仕組み」
「そうなの……?」
「そう。それに、この行事をもって俺たち三年は生徒会を引退する。次代への引継ぎも含めているから、今生徒会を取り仕切ってるのは簾条だと思うけど?」
 そうなんだ……。
 だとしたら、忙しい桃華さんに気づかれずに動けるかもしれない。
 できることなら、この騒ぎに乗じて謝罪を受けたかった。
 誰にも見つからない場所で密やかに……。
 フロアの端で沙耶先輩を探していると、一緒にいたツカサへ連絡が入った。
 手短に連絡を終えると、
「図書室前の廊下で待ってるって」
「……わかった。行ってくる」
「ひとりで?」
「うん、ひとりで行く」
 ツカサは何か言いたそうだったけれど、これ以上追い討ちをかけるような真似はしたくない。
 だから、即座に進行方向を変えて歩き出した。