閉会式が終わると、女子はクラスへ戻って後夜祭の準備に備える。つまりは衣装替え。
  ワルツ競技で着たドレスは上下セパレートになっていたから、足の怪我を見られることなく着替えることができたけれど、ワンピースタイプのドレスからワンピースの制服に着替えるのは至難の業だ。
 さらにはそのあとに打ち上げというものがあるわけで、今日着てきた膝丈の制服では膝下の怪我は隠せない。
 その時点でばれるとして――「なんで話してくれなかったのっ!?」という事態になるのだろうか。それなら自分からカミングアウトするべき……?
 閉会式からこちら、佐野くんと話す機会が得られず、結果的に海斗くんと桃華さんに話したのかさえ知らないのだ。
 ドレスに着替え終わった女子は、クラスで一番器用な美乃里さんに群がり髪の毛を結ってもらっている。
 私はハーフアップにして、夏休みに桃華さんと購入していたバックカチューシャをつけるだけ。とはいえ、小さな鏡を見ながら、しかも、ロンググローブをしたままのため苦戦していた。すると、
「グローブつけたままじゃ無理でしょう? やってあげる」
 香月さんが助けてくれた。
「ありがとう」
「バックカチューシャのコットンパールが上品で御園生さんに合ってるわね。ドレスとの相性もいいし」
「ふふ、嬉しい。夏休みにね、桃華さんと初めてショッピングへ行ったの。そのとき、色違いでおそろいにしたんだ」
 後夜祭で使おうと思っていたわけではないけれど、後夜祭で着るドレスを選んだときに「似合うかな?」とツカサに見せたら、「似合うと思う」と言ってもらえたのだ。
 後日、バックカチューシャと雰囲気の似たものがあったから、と唯兄がネックレスを買ってきてくれた。
 それを首に着けて思う。
 ツカサは気づいてくれるかな、と。