上半身を動かしたことで、身体に回されている腕の存在をはっきりと感じ取った。
 確認するまでもない。
 眩暈を起こした私をキャッチしてくれたのはツカサで、私は逃げるどころかツカサのもとに着地してしまったのだ。
 そこまで考えてはっとする。
 ツカサに着地……?
 それはつまり――今、私の背中が面しているのはツカサの胸ということ……?
 意識した途端に身体中が熱くなる。
 忙しく動き出した心臓を落ち着けるため、あれやこれやと考えるものの、何も考えられないし、心臓が落ち着く気配もない。
 こんなことなら今までだって何度もあった。でも、背中に面しているのが服を纏わないツカサの肌だと思うと、どうしようもなく恥ずかしい。
 視界が戻って一番最初に目に入ったものは、ツカサの腕だった。
 腕だって見慣れている。少し前までは夏服だったから毎日のように目にしていた。なのに、どうしてこんなにも恥ずかしく思うのか――。
 もう、やだ……。
「翠?」
「ごめん、なさい……」
 お願い。これ以上何も言わずに立たせてください……。
 神様に祈るような気持ちでいると、
「……バカ、顔赤すぎ。そんな顔、ほかの男に見せるな」
 そうは言われても、どうやったらこの熱が冷めるのかなんてわからない。
 それこそ、物理冷却を試みないことには熱は引かないような気がする。
「視界は?」
「……もう、大丈夫」
「なら、ゆっくり立って」