右に海斗くん、左に佐野くんが座り、
「夏に俺らと海行ったじゃん」
 海斗くんの言葉に、
「そうなんだけど……」
「海斗、ムリムリ。御園生、あのとき海に入ることでいっぱいいっぱいだったから」
「あー……そっか。海が怖くてそれどころじゃなかったか」
 反論したいのにできない。
 なんだか今日はそんなことばかりが続く。
 まだ視線を野放しにするのは危険で、人の足元しか見えない高さに視線を固定する。と、
「あ、司だ」
 声に反応して顔を上げると、一階フロアから上がってきたツカサが目に入ってしまった。
 ひとりで歩いていたわけじゃない。そこかしこに人はいたのに、どうしてツカサを見つけてしまったのか――。
「どうしてツカサがいるのっ!?」
 隣にいる海斗くんを見て、視界から強制排除。
「えええっ!? だって、黒組決勝まで勝ち残ってたし、決勝戦が終われば戻ってきてもおかしくないでしょーが」
「終わったら集計作業で本部じゃないのっ!?」
「翠葉さん……さすがに半裸のまま本部で仕事ってわけにはいかないでしょう……。それに、今は飛翔が本部にいるから問題ないんじゃない?」
「じゃぁっ、どうしてメガネかけてないのっ!?」
「お嬢さん、棒倒しでメガネなんてかけてたら外れたとき危険でしょーが……」
 あ、そっか……。
 でも、色々と不意打ちすぎて文句を言いたい。ものすごく申し訳ないのだけど、何か口にしていないと落ち着かない感じ。
 今まで、ふとしたときに腕の筋肉や首に浮き上がる筋を意識することはあった。でも、半裸姿なんて見たことないし、瞬間的に目にしただけなのに、瞼に焼きついたみたいに鮮明に思い出せる。
 白い肌に引き締まった肉体は、適度に筋肉がついていて、まるで彫刻品のように美しかった。