団長副団長、黒組応援団が観覧席へ撤収すると、すぐにチアリーディングが始まった。
 通常、チアリーディングはふたつに分けられる。
 組体操を含みアクロバティックな技を披露するのがチアリーディングで、組体操を含まないダンスを主としたものがチアダンス。
 応援合戦で行われるチアリーディングは、チアダンスを主体としているものの、その中に組体操の要素を含むスタンツを加えることで、大幅な加点が得られる。 
 各組、基本はチアリーディング部に所属している人を中心に選出されているけれど、中にはひとりも部に属していない組もあり、出来上がりにはずいぶんと差ができていた。
 うちの組はというと、一年から三年まででチアリーディング部に所属している人が七人。そして、体操部に所属している人やもともと運動を得意とする人で編成されていた。
 中でも目立つのは沙耶先輩。
 沙耶先輩はチアリーディング部でも体操部でもない。しかし、中等部の頃から勧誘され続けているというだけのことはあり、何をやらせても軽々とこなし、重力を感じさせない動きを見せていた。
 この競技の審査基準は元気の良さ、笑顔、ダンスや技の完成度、難易度、連続性、スピード感、同調性など多岐に渡る。
 二ヶ月間の準備期間があるにしても、まったくの素人ばかりが集まった組にはずいぶんとハードルの高い競技であることに代わりはなく、中には脚や腕にテーピングを貼っている人もいて、練習中に傷めてしまったのかな、と推測する。
 それでも、外部から専用の講師を招いているだけのことはあって、紫苑祭当日にはどの組も相応の演技を見せるのだからすばらしい。
「努力」や「練習」から得られる「可能性」を十二分に感じられる競技だった。
 何よりも、笑顔で元気よく踊っている様を見るのは清々しい。
 組を問わず応援したくなるし、ずっと見ていたいとすら思う。
 その程度にはエンターテイメント性を有していた。