「あ、ひどい」
「ごめんっ」
 私は笑いを堪えながら謝った。
「真咲くん、写真、お願いします」
 改めてお願いをしてから、私は風間先輩と飛翔くんのもとへ向かった。

 二年生になってから、日常生活における制約の話をしたことはない。
 ただ、香月さんと美乃里さんは一緒に行動することが多いから、「知っておきたい」と言われて話したことがある程度。
 おそらく、真咲くんは普段の行動や海斗くんたちとのやり取りを見て気づいたのだろう。
 自分の気づかないところで見ていてくれる人がいるということに、ほんのりと心が温かくなる。
 今でも注目を浴びるのは苦手だし、姫と呼ばれることに困惑はする。けれど、真咲くんのこれは嬉しいと思う。
 性質の悪い好奇心からではなく、仲良くなろうと歩み寄ってもらえた感じがするから、その気持ちが素直に嬉しい。
 ふと、自分の変化に気づき笑みが漏れた。
 人の記憶に残りたくない。誰とも関わりたくないと思っていた中学生の頃からすると、考えられない進歩だ。
 鎌田くんに話したら一緒になって喜んでもらえそうだ。
 そんなことを考えていると、
「少しは前進したんじゃねーの?」
 飛翔くんがボソリと呟いて私を追い越した。