あまりの勢いにびっくりしてシャッターから指を離したものの、驚いたのは私だけではなかったみたい。
 周りにいた人たちの注意を引くほどの音だったし、階下にいた人たちの視線まで集めている。
 挙句の果てには被写体であるツカサとも視線が合ってしまい、咄嗟に手すりの陰に隠れてしまった。
 は、恥ずかしい……。
 居たたまれない状況に恐る恐る顔を上げると、
「御園生さん、本気出しすぎ」
 風間先輩の一言に、その場がどっと沸いた。
 そんな状況で海斗くんに話しかけられる。
「でもさ、司が応援してる間って、団長副団長はエールを受け取るためにフロアに下りるじゃん? 翠葉写真撮れないんじゃん」
 そんなこと、言われるまできれいさっぱり忘れていた。
 写真を撮る許可が下りたことに気を取られ、ただの一ミリも覚えていなかった。
「……海斗くん、どうしよう……。せっかく撮ってもいいって言われたのに……」
「……なんつーか、司のやつ、そこまで見越して許可出してたりしない?」
「えええっっっ!?」
 びっくりする私の傍らで風間先輩が、
「超絶あり得そうっ!」
 そんなことはないと思いたいけれど、実際はどうなのか……。
 階下で団員の整列を指示しているツカサに視線をやると、
「うちのクラスに写真部いないの?」
 海斗くんに尋ねられた。
「いない……」
 そもそも、二年生で写真部に所属しているのは私だけなのだ。
 こうなったらカメラの使い方を教えて代わりに撮ってもらうしかない。
 意を決して海斗くんに向き直る。と、海斗くんが観覧席の上段に座っていた山下くんに声をかけた。