あれこれ考えながら観覧席を眺めていると、テラスから駆け込んだ一年生たちが目についた。そのうちのひとりと視線が合うものの、わかりやすく逸らされる。
 その視線のやり取りに気づいた人がふたり。
「……谷崎さん、ありゃ、まだ心の整理はついてないっぽいな」
「そうみたいね……。御園生さん、大目に見てあげてもらえるかしら?」
 私は愛想笑いを返すことしかできない。
「大目に見る」と言えるほど自分が上に位置しているわけではないし、「気にしていません」などと言ってしまったら谷崎さんに申し訳ない気がする。
 言えることがあるとしたら、
「もし謝りに来てくれたなら謝罪は受け入れます。でも、私は謝罪を望んでいるわけではないので……」
 風間先輩と静音先輩は顔を見合わせ、
「穏やかな顔してるけど、実は結構怒ってる?」
 言われたことに驚いて、私は声を立てて笑った。
「確かに、昨日はムッとしたりもしましたけど、そんなに尾を引くものではないです。……私はただ、認めてほしいだけ。組に選ばれた代表者として、認めてほしいだけです。でもそれって、競技で結果を出すのが一番の近道だと思いませんか? だから、今日のワルツをがんばります」
 言い終わると同時にチャイムが鳴り、放送が入った。
『ただいまを持ちまして、応援合戦並びにモニュメントの投票を打ち切ります。生徒は組ごとに整列を始めてください』
「よっし、二日目! 赤組っ、フロアに下りて整列っっっ!」
 風間先輩の言葉があたりに響き、皆が一斉に移動を開始した。