そんな姿に、何を伝えようとしてくれているのか、と考えをめぐらせる。
 けれど、私が想像するより先にツカサが口を開いた。
「『価値観の違い』があったとして、翠の価値観が理解できなくても認めないわけじゃないし、わかろうとしないわけでもないから――無理に割り切らないでほしい」
 その言葉に気づかされる。
 昨日、傷ついたのは私だけではないのかもしれない、と。
 あのとき私は、これ以上傷つきたくなくて、わざと距離を置くような、突き放すような言い方をした。その言葉にツカサが傷ついたのだとしたら――。
「ツカサ、ごめんっ。昨日、ごめんね? 突き放すような言い方して、ごめんなさい」
「いや、いい……。先に傷つけたのは俺だから」
 でも、それだって私を傷つけようと思って傷つけたわけではない。
 ……こういうことも、あるのね。
 どちらに悪気があったわけでもなく、それでもすれ違ってしまうことが、あるのね。
 でも、話すことができたなら……こうやって話すことができたなら、絡まった糸は解けるし、切れてしまった糸をつなぐこともできる気がする。
 ツカサも私も、どちらかというと話すのは苦手だ。でも――。
「ツカサ、たくさん話そう? すれ違ってもケンカになっても、私が泣いても何してもっ。……時には時間を置かないと冷静に話せないこともあると思う。でも、時間を置いたらちゃんと話そう?」
 思ったことを片っ端から口にしていったら、ツカサは呆気に取られた顔をしていた。
 ツカサの返事を待っていると、
「話すの、苦手なんだけど……」
「……私だって苦手だもの。……でも、話そう? 話さないとわからないこと、たくさんあると思うから」
 一緒にいられたらそれだけで幸せだと思っていた。言葉がなくてもある程度は伝わる、分かり合えると思っていた。
 でも、違った……。
 人よりも少し一緒にいる時間が長いくらいではツカサのすべてを知ることはできないし、知っていてもおかしくないであろうスケジュールですら把握していなかった。
 やっぱり、言葉は必要なのだ。
「私はツカサのことを知りたいと思うけれど、ツカサは――ツカサは思わない? ……それなら、私にしか利点のない話だから考え直さなくちゃいけないけど……」
「いや、別に知りたくないわけじゃなくて……」
 すぐに否定してくれたけれど、言葉を濁す理由はなんだろう……。