やさしい手のひら・後編

健太・・・泣いているの?

「もう亜美に戻ることはない。これが本当に最後だから。電話掛けて悪かったな」

「待って・・・切らないで・・・」

健太は何も言わないでいる

私は泣きじゃくるのを必死に止め

「健太・・・今、幸せ?」

「・・・」

どうしても聞きたかったこと

そしてちょっと立ったてから健太が

「幸せだよ」

そう答えた

込み上げてくるこの思いを私はぐっと押さえ

「私も新くんがいるから幸せだから」

もうそれを言うしかなかった

素直に戻って来てって言える勇気がなかったんだ

「そっか・・・幸せにしてもらえよ」

「うん」

「じゃあな」

「健太・・・仕事頑張ってね」

「亜美も幼稚園の先生になれよ」

私が幼稚園の先生になりたいこと、憶えてくれていただけで嬉しい

「亜美・・・ごめんな」

ガチャッ

そう言って電話は切れてしまった

「うわーん」

私バカだよね

最後まで素直になれなかった

でもね、健太の言葉は誰からのプレゼントよりも嬉しかった

健太が幸せならそれでいい・・・

なんて嘘。そんなのきれい事

本当は戻って来てほしい。佐原樹里と別れて、そう言いたかった。いっぱい責めてこんなに苦しいんだよって訴えたかった

でも言えるはずがない

幸せだと言う健太をやっぱり私には壊すことは出来なかった