やさしい手のひら・後編

ふと、凌のお母さんの話を思い出す

凌の左足がもう動かないこと

このことを知っているのは私だけ

唯ちゃんは知らない

もし知ってしまったら、唯ちゃんはどんな気持ちだろう

「亜美さん…」

名前を呼ばれて我に返る

「凌くんのことお願いします」

そう言って深々と頭を下げている

「唯ちゃんは…それでいいの?凌のこと好きなのに私と付き合っていいと思っているの?」

唯ちゃんの本心が聞きたかった

すると唯ちゃんはとても眩しいくらいの笑顔で

「好きな人が幸せなら、私はそれを願います」

そう答えた

それは嘘がない笑顔で、本当に心から言っているのが伝わるぐらい真っ直ぐで、狂いのない言葉だと私は思った

人それぞれの思い、愛し方

思いの届かない人の幸せを願うことも時には大事なんだ

いつも自分だけ幸せになりたいと願うだけじゃなく、相手の幸せも考えなくちゃいけない

健太…

私は健太の幸せを願いたい…