会社員として働いている私にはその曖昧さの理由を察する事は容易で、突っ込んで聞くこともなかったけれど、こうして自ら仕事の事を話し始める紬さんは初めてで驚いた。
「病気の人を治療する薬の開発が主だけどさ、初めてそれ以外にも研究してみたいって思う薬ができたな」
「……何?」
「ん?瑠依が素直に俺と結婚するって言う薬。あ、俺に抱きつきながら、なんていう効用もプラスで」
「はあ?」
「俺がどれだけ結婚するって言っても反抗ばかりするし、まあ、あきらめるつもりも結婚の予定を変えるつもりもないけどさ。嫌だ嫌だっていう瑠依を説得する時間がもったいない。どうせなら、その時間をもっと楽しく過ごしたいだろ?蜜月っていうの?せっかくの婚約期間なんだからさ」
見上げると、口元を歪めた子供じみた顔。
蜜月?婚約期間?それに、私が素直に紬さんと結婚する気になる薬?
「なんて少女趣味……その発想、いまどきの女子高生でもしないんじゃない?」
呆れた声で思わず呟いた。
「いいだろ、別に。俺がどれだけ瑠依と結婚したいって言っても、逆らってばかりで面倒くさい」
「そ、それは、紬さんには私以外に好きな人がいるからでしょ?」
「だから、それって誰のことだよ?瑠依以外に惚れてる女なんていないぞ」
「嘘。さっきだって、紬さんには他に好きな人がいるんじゃないのかって聞いた時、驚いて……私から離れたでしょ?肩に置いていた手がずるずるって落ちて、離れていった」
「あ、あれは……がっくりきたんだよ。瑠依には俺の気持ちが伝わってなかったって思ってショックだったんだよ」
「な、なによそれ」

