冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う





興味もその気もないお見合いに、とりあえず着飾って顔を出し、適当に時間をつぶして帰ろうと安易に考えていた私に、江坂さんは呆れ顔だ。

「あー、すみません。おばあ様、ですね、えっと、全く存じません」

すみません、と頭を下げると、ホテルのロビーにふさわしいふかふかのソファの背に体を預けている江坂さんが私をじっと見る。

ははっとごまかすように無理矢理笑顔を浮かべて見返すと、ふふん、と鼻で笑われた。

「うわっ。鼻で笑った」

思わず顔をしかめた私に、江坂さんは表情を変えることもなく。

「俺も、今すぐ結婚する気はないんだけどな」

「は、はあ」

唐突な彼の言葉は穏やかだけど、結局は私の事が気に入らなくて、結婚する気もないってことだろう。

不機嫌そうに私を見る表情からは、苛立たしさも感じられる。

そんなに、お見合いが嫌だったのかと、逆に興味深く見入ってしまった。

お見合いの席だからなのか、普段からそうなのか、彼が着ているのはどう見ても仕立ての良さそうなスーツ。

見た目の良さも加わって、何だか無敵のオトコだな。

そんな外見を自覚しているのか、漂う雰囲気さえ美目麗しい。