私はこのまま紬さんから逃げられないんじゃないかと、喜びまじりの不安を感じていた。
尚も続くキスは、次第に熱を帯び、私からも応えるように、体が触れ合う。
「そこの若い兄ちゃん、それ以上のことをするなら、一駅先にいいホテルがあるからそっちに行って思う存分愛してやれ」
食事中のお客さんたちがはやしたてる声に、恥ずかしさのあまり体中が熱くなった。
ホテルなんて、ホテルなんて。
唇が離れたと同時に、私は紬さんの胸をおしやり、体を離そうとするけれど、あまりの展開に驚いてしまったのか、腕に力が入らない。
まるで紬さんの胸に手を添わせて喜んでいるだけのような曖昧な状態に、どうしようもない。
そんな状態から逃げ出したくても、今の私には目の前の男前を睨むことしかできない。
真っ赤に違いない私の顔を見て、紬さんは
「ホテル、もしくは俺の部屋?」
にやりと笑う余裕を見せた。

