見惚れていたなんてあっさりと言われたんだから、当然の反応かな。
言われ慣れているだろうけど、私がそんなことを言ったことに驚いているのかもしれない。
だけど、私が本当に紬さんに伝えたい思いは別にある。
「言葉を失って見惚れてしまうくらい紬さんの顔は整いすぎているし、素敵だけど。
それだけじゃ、やっぱり結婚できないの。愛する人に愛されて結婚しないと、幸せにはなれないし」
私の言葉には特に抑揚もなく、必死に伝えようとしているわけでもない。
たとえ強い口調で紬さんに言ったとしても、自分の思いを貫こうとする強引な紬さんには通用しないと、この数時間でよくわかった。
何度も私が紬さんと結婚するつもりはないと言っても、それを受け入れてくれる様子はない。
それなら仕方がない。
自分の気持ちを何度も伝えて、拒み通すしかない。
「紬さんだって、おばあ様の初恋を実らせるために自分の気持ちを二の次にして、私との結婚を受け入れているんでしょ?」
「は?」
「本当は私と結婚したいわけじゃないのに、おばあ様に気を遣って……」
落ち着いて話す私に、紬さんは顔をしかめたまま舌打ちをひとつ。
「んなわけないだろ。誰が自分の人生を捨ててまで、おばあの初恋の事後処理をするんだよ」
「ちょっ、声、大きい」
「うるさい。結婚しないだとか愛されてこその幸せだとか、何言ってるんだよ」
向かい合わせに座っている私達。
間にあるテーブルを乗り越えそうになりながら紬さんが体を寄せてくる。
そして、あっという間に、紬さんの怒った顔が目の前に寄せられた。

