だめだめ、強くならなきゃ。
何度か自分に言い聞かせ、気持ちを切り替えた私は、後ろ姿だけでもスタイルの良さが一目瞭然の日里さんをぼんやりと見る。
すると、彼女が言い残した言葉が頭の中で何度も行き来する。
「女の幸せは愛されてこそ、なんだって」
ぽつり、そう呟いた私を紬さんが見つめる。
紬さんの会社を訪ねて以来続いていた慌ただしさの中、ただ『結婚はできない』と言い続けてきた私だけど、その思いはやはり変わらずそのままで。
さっき聞いた、日里さんの言葉がその後押しとなっている。
私のその思いに気づいているのか、紬さんは眉を寄せ、私がそれ以上何も言わないよう威嚇し息を詰める。
私を脅すような顔は、少しだけ怖さも感じるけれど、それでもいい顔だなあと思ってしまうほど、私は紬さんを気に入っているとも気づく。
出会って間がなく、強気全開でわが道を行く未来の社長様のどこが良かったのだろうかと自分の心を持て余す。
それでも、この顔は確かに素敵過ぎる。
「瑠依?」
ひたすら紬さんの顔を見ていた私を怪訝に思ったのか、私の目の前を、紬さんの手の平がひらひらと上下する。
「腹の減り過ぎでぼーっとしてるのか?」
「あ、ううん。紬さんの顔がね……あまりにも格好よすぎて見惚れていただけ」
「は?」
私の言葉に、紬さんの表情が固まった。

