あーあ。
かなり怒っている。
出会って間もないけれど、すぐにわかる。
「紬さん……?」
うかがうような私の声に一瞬視線を向け口元を引き締めた紬さんは、不機嫌な気持ちを隠すことなくお父さんを睨みつけた。
「江坂家全員で歓迎っていうのはいいけど、瑠依は、俺と結婚するんだから必要以上に近づくな。
今日は俺とふたりきりで夕食に行くんだ」
「そんな意地悪なこと言うなよ。紬の嫁になるってことは俺の娘になるんだから、娘と夕食を一緒に食べてもいいだろ?」
「無理。親父は大好きなおふくろとふたりで食事にでも行けばいいだろ?
親父がおふくろとふたりで食事に行く時、俺も一緒に連れて行けなんて言ったことあるか?」
「いや、ない。言ったとしても、父さんと潤子さんの大切な時間を邪魔なんてさせないさ」
「邪魔されたくないのは俺だって同じなんだよ。せっかく瑠依とこうして会えたんだから二人でゆっくり過ごす。親父は引っ込んでくれ。
じゃなきゃ、母さんに言いつけるからな。大切な人との時間を邪魔するなら馬に蹴られてこいだっけ?絶対怒るからな」
「……確かに……潤子さん、怖いからな……でも、俺とふたりでいる時は可愛いんだぞ。この間だって」
「あー、そんなの知りたくもない、黙れ。両親がいちゃつく姿を想像して喜ぶ息子がどこにいるんだよ」
「えっと、それは、ここに?」
紬さんのお父さんは、紬さんを指差すとにやりと笑った。

