すると、私に回した手はそのままで、紬さんはうんざりとした声をあげた。
「もういいだろ?おやじが実物の瑠依を見せないと瑠依の会社まで乗り込んで見に行くとか馬鹿なことを言うから呼んだんだ。この綺麗な顔は俺のもんだから、これで終了」
「そ、そんなこと言わずに一緒に食事にでも行かないか?な、瑠依ちゃんだってこんなかわいげのない男と二人きりで食事をするよりも大勢で食べたいだろ?」
「あ……はあ。その」
「紬とふたりなんて、おいしいものもおいしくなくなるだろ?俺の息子なのに口数は少ないし自分の感情は出さないから何を考えているのかわからないし。な?みんなで食事をしながら、楽しい時間にしようじゃないか」
いつの間にか私の目の前に立ち、強い口調で私を説得する紬さんのお父さん。
紬さんのことは無視して私一人に話しかけている。
「父さんだって瑠依ちゃんと仲良くなりたいんだよ。潤子さんも絶対に瑠依ちゃんのことを可愛がってくれるだろうし、江坂家全てで瑠依ちゃんを歓迎しているんだからね」
ね、と言われても、私に選択権はないように思えるんだけど。
腰に置かれた紬さんの手が更に私を引き寄せ、密着度はさらに上昇しているというのに。
そっと紬さんを見上げると、その顔は予想通り不機嫌そうで、眉を寄せた顔が小さく震えている。

