冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う





すると、紬さんは苦笑し、「あー、この人のことは気にしなくていいから」と小さく肩をすくめた。

気にしなくていいと言われても、目の前のこの男性は社長さんであり紬さんのお父さんで、そして。

おじい様が愛した女性の息子さん。

おじい様とその女性は、それぞれに家庭を持ち幸せな人生を送っているというけれど、若い日の恋心を昇華させたくて私と紬さんとの結婚を画策した。

そして、その希望通りお見合いの場が設けられ、私と紬さんは出会い、今日に至る。

「紬の父の、江坂利一です。一応、この会社の社長さん」

「……あ、葉月瑠依です。初めまして」

大きな笑顔を向けてくれる紬さんのお父さんに、慌てて頭を下げた。

お見合い以来予想もしない展開が続いて慌ててばかりだ。

社長だという紬さんのお父さんは、私が想像していた社長というイメージとは違ってあまりにも穏やかで優しげに見える。

それに、今まで何度か私の写真を見たことがあると言っていたけれど、それっておじい様や、亡くなったおばあ様が見せたのだろうか?

加えて、私に会えたことが心底嬉しいと隠さないその表情。

その表情、なんだかおかしくはないだろうか?