もしかしたら、常務の動きを察知した国見さんは、わざと常務の元へと移り、状況を探っていたのではないかと。
そして、父さんが骨折で済んだのも、国見さんのおかげなのかもしれない。
国見さんが常務の指示により父さんの車を追い込んだのならば、命を落とすような危険は避け、怪我だけで済む程度の事故で終わらせようと考えたのではないだろうか。
おじい様への真摯な忠誠心を誰もが認める男性だった。
そんな彼が、簡単に常務のもとにつき、父さんの命を狙うようなことをするとは考えられない。
「……やだ……どうして、みんな……」
後継者問題なんて、どうでもいいのに。
誰が社長になろうが、命以上に重要なことなんてないのに。
自分の人生を賭してまで欲しい地位なのだろうか。
大勢の社員の将来を考えれば、誰が社長になるのか。
それは簡単な問題ではないとわかるけれど、これ以上右往左往させられるなんて、まっぴらだ。
命が関わる事故まで起きて、これ以上誰かが傷つくなんて。
「もう……嫌だ」
小さく呟いた声はかすれていたけれど、紬さんは敏感に反応した。

