人間が短絡的な考えを抱くのは容易で、思考回路のどこかに支障をきたしていた常務は父さんが乗っていた社用車を事故に追い込んだ。
国道の左車線を走っていた父さんの乗った車は、常務の息がかかった部下が運転する車によって前後と右側をふさがれ、コントロールができない状態になった。
運転技術には自信がある専属の運転手が運転する社用車とはいっても、囲まれた状態から抜け出すこともできず、次第に左側へと寄せられていく。
徐々に車線から外れた車は、煽られたせいでスピードもかなり出ていた。
そして、父さんの乗った車は側壁にぶつかり、転倒。
父さんも運転手さんも命に別状はないものの大けがをした。
「公道でそんなことをしでかして、捕まらないとでも思っていたのかよ」
怒りを含んだ声で呟く紬さんに、私も小さく頷いた。
誰もがその現場を目撃できる場所で起こった事故の経緯は、多くの証言により事実が判明し、犯人は一気に拘束された。
その犯人の中には、私を可愛がってくれていたおじい様の元秘書の国見さんもいて驚いた。
おじい様からの信頼も厚く、良好な関係を築いていたというのに、最近常務から声がかかり、彼の秘書になった。
そのことに違和感を感じながらも、会社員なら異動も仕方ないのかと思っていた。
『……あいつは、俺のために異動を受け入れたんだ』
苦しい表情でそう言ったおじい様のことをふと思い出した。

