そんな中でも私を抱きしめたまま、離す気配はない。
それが不思議と心地いい。
紬さんからの種明かしのような話に混乱しながらも、紬さんの胸の中の温かさから抜け出したくなくて、体全体を紬さんに押し付けた。
俯いたままの私の視線の先には、零れ落ちたコーヒーの粉が相変わらずあって。
けれど、夜明けとともに部屋に入ってくる朝の光の中にあるそれは、確かに散らばっているけれど、思っていたよりも少なかった。
混乱していた気持ちが落ち着くにつれて、そんなこと大したことはないと、思えるようになったのかもしれない。
コーヒーを淹れようとして震えていた指先も嘘のように落ち着き、ただぎゅっと紬さんの背中に押し付けられている。
「紬さん……」
やっぱりこれは夢じゃないんだ。
私が欲しい言葉ばかりが聞こえて、愛されたいという願望が現実になったけれど、決して夢じゃない。
私だけの思い込みでもない。
カーテンの隙間から差し込む細い光の揺れも、夢でなく現実なんだ。
「瑠依? 驚いた、よな?」
「当然でしょ?」
「だよな」
今まで愛してるって一度も言ってくれなかったのに、突然何度も言ってもらえる現実。
嬉しくて仕方がないけれど、今まで言ってもらえなかった仕返しにちょっと意地悪を言ってみたい気持ちもある。

