首筋に落とされた紬さんの唇が、私の存在を確認するように優しく這う。
時折痛みを加えたその唇の動きは、私の全てをその腕の中に取り込もうとあがいているようにも感じられて。
私は本当に愛されていると、感じずにはいられない。
「かなり前からずっと……俺は瑠依を愛しているんだ。俺との結婚は周囲に仕組まれた、あり得ないものだけど。
瑠依と俺が幸せになればそれで、結果オーライだろ?」
「……なんだか、軽いね」
「軽いことなんてない」
紬さんの口を突いて出た予想外に強い声音。
「瑠依を葉月の後継者候補から外すための結婚相手に俺の名前が挙げられた時は、そりゃむかついて、俺の人生をどう考えているんだって思ったけど。
意地になって拒む前に、瑠依がどんな女なのか探ってやろうと……で、調べれば調べるほど、瑠依が欲しくなった」
ははっと小さく笑い、私の首筋に顔を埋める紬さん。
「ミイラ取りがミイラになったっていうか、瑠依の会社にこっそりどんな女なのかを見に行って一目惚れだ」
「い、いつ……?」
「んー。いつだっけな。茅人から俺に結婚の話が回ってきてすぐだから一年ほど前かな」
「そ、そんな前?」
「そう、そんな前。俺は、昨日や今日瑠依に惚れたわけじゃない。
それに茅人がだめだからって押し付けられたせいで、瑠依を嫁さんにしたわけじゃない。
この一年、瑠依との結婚を何度も悩んで、それで決めた。
結局は瑠依に惚れた俺の負けだ」
「ま、負けって、意味がわかんない。それに、一年も考えたって言うけど、私は何も知らない……」
「よく言うだろ? 惚れたもんが負けだって。瑠依が俺の存在を知る一年も前に惚れてしまった俺の完敗だ。
……だろ?」
「だろって言われても、それにそんなこと、思ってもみなかったから。
……一年も悩んでいたって」
「そう。一年も、だ。正直、長かった。
あの見合いの日、ようやく瑠依を自分のものにできると思って意気揚々とホテルに行ってみれば。
反抗的な瑠依には手をやくし、理美は乱入してくるし。どうなってるんだと思ったな」
お見合いの日の出来事を思い出したのか、紬さんはふるふると体を震わせて笑っている。

