強い力でつかまれた右手は、紬さんから解放される気配もなく、私はその手をちらりと見やり、そして俯いた。
紬さんから聞かされた事実は、思った以上に私の心を揺らし、どんな顔をして紬さんと向き合えばいいのかわからなくなった。
ほんの少し前まで、この体の奥深くで彼の熱を感じていたというのに、その幸せにすがったまま結婚していいのだろうかと怖くなる。
私と紬さんが結婚するのは、おじい様と紬さんのおばあ様が実らせることができなかった初恋を昇華させるためだと聞いていた。
そのことに反発を覚えながらも、次第に紬さんを好きになり、おじい様たちの願いを叶えるという前提以上に、紬さんと結婚できる幸運に感謝すらしていたというのに。
紬さんにしてみれば、茅人さんの二番手として、それも、好きでもない女を押し付けられただけの結婚。
今は私のことを大切にしてくれるし、この先も一緒にいてくれるとわかってはいるけれど、それでもやはり。
紬さんの心境を考えると切なくなる。
紬さんは幸せなのだろうかと、これまで何度か思った感情が深く押し寄せてくる。
私のためだけの結婚、そんな結婚に、紬さんはどんな思いで同意したのだろう。
こんなに近くにいるというのに、紬さんの存在が遠く感じられて仕方がない。
紬さんの体温を感じているはずの腕も、なぜか温かさを感じられなくて、自分の腕じゃないようだ。
「何を考えてる? 何が気になる?」
俯き、二人の足元をぼんやりと見ている私に、紬さんの声が響いた。

