「瑠依のおじい様と俺のおばあが昔むかし恋人同士だったっていうのと、お互いの孫を結婚させようと約束していたのは事実だ。だけど、そのことを、二人はすっかり忘れていて」
「忘れていた?」
「ああ。二人とも幸せな結婚をして、初恋の思い出は綺麗なまま胸の中に封印していたらしい。
まあ、幸せな家庭を築いて子供や孫も大勢生まれたんだから、わからなくもないけどな。
だけど、瑠依のおじい様が、茅人の結婚後俺の存在を知って、あっという間におばあに連絡をして……」
「そうなんだ」
こんな時にどうかと思うけれど、今日一日、父さんが事故に遭ったり、紬さんではなく茅人さんが私の最初のお見合い相手だったという思いがけない事実を知らされていたせいか、予想外のことを聞いても、感情が麻痺したのかうまく響いてこない。
「まあ、そういうこともあるよね」
そう呟くだけで精一杯だ。
当然のことながら、今日知った事実を一気に受け入れるには時間がかかる。
おじい様が私に言っていたことも、紬さんが私との結婚を進めるために教えてくれていたことも、事実とは異なっていたのだから。
「……今そのことを聞いたからって、何が変わるわけじゃないけど」
事実を知った今感じることに、どんな答えを出せばいいのかわからない。
私はため息をどうにか我慢し、唇をかみしめる。
そして、紬さんに抱きしめられたままのベッドから起き上がると。
「そろそろ起きてもいい時間だよね。コーヒーでも飲んで落ち着くことにする」
ベッドの下にちらばっていた服を手早く着て、キッチンへと向かった。

