冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う




そして、当然のように「ここにいますから、安心してください」と言って父さんの頬を撫でた彩也子さんの表情は、あまりにも艶やかだった。

小さな頃から何年も一緒にいたのに、初めて見せられた彩也子さんの女の顔に、どきりとした。

おじい様から病院側への口添えもあり、父さんが入院している間はずっと、病院に寝泊まりすることになった彩也子さんは、これまで我慢していた気持ちを解放し、思う存分父さんの側でお世話をするのだろう。

「大丈夫か?」

「え? 何が?」

「瑠依も、お父さんの側にいたかったんじゃないのか?」

「もちろん、心配は心配だけど、彩也子さんが付き添ってくれるから」

「そうか……なら、いいけど」

「どうしたの?」

「彩也子さんがいなければ、瑠依とお父さんはもっと……いや、いいんだけどな……」

口ごもる紬さんに違和感を感じ、身体を起こして紬さんと目を合わせた。

すると、頬にかかっている私の髪の毛を梳きながら、「何でもない。……とにかくお父さんが無事で良かったな」と言って笑ってくれた。

口ぶりは普段と変わらないけれど、何かほかに思うものがあるような様子が気になる。

それがなんなのかわからないまま、すりすりと体を寄せた。