冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う




私はその場にしゃがみ、震えながら私に差し伸べられた父さんの右手を両手で包み込んだ。

以前よりも細くなってしまったとわかる父さんの指に胸が痛くなり、呼吸の合間に謝罪の言葉を呟く父さんの目じりから落ちる涙に目の奥が熱くなる。

その時、父さんの枕元にあったナースコールのボタンを押す彩也子さんの姿が目に入った。

目が覚めた父さんを見ながら、ほっとしたように表情を緩めている。

やっぱり……彩也子さんと父さんは、特別な関係だろうと、わかる。

そう確信して、どこかほっとしている自分にも気付く。

「瑠依を……不幸にしてしまって、ご、ごめんな……」

一生懸命、声を絞り出す父さんは、苦しげに私を見つめている。

「父さん、私……今は不幸じゃないよ、父さんも母さんも、ちゃんと生きてるから、会いたい時には会えるし。
私にはもう、旦那さんだって……」

「あ……そうだ、つ、紬くん、と、結婚……だ。父さん、結婚式に出られそうもないな……ごめん」

シーツに涙を落としながら、父さんは小さく笑った。

無理しているのがわかる痛々しい笑顔を見せられて、私は父さんの手を更に強く握りしめた。

一緒に暮らさなくなってからも、会えば平気な顔で話していたけれど、お互いに気を遣い、心全てを話すこともなかった。

手を繋いだり、瞳の揺れを感じるほどの親しい時間を過ごすなんてこともなかった。

「父さん、私、幸せだから、心配しないで。もう、紬さんのお嫁さんだから、安心して。
ほ、ほら、紬さん、ここにいるからね」

私の後ろに立っていた紬さんを振り返り見上げると、紬さんは真剣な表情でその場に膝をついた。