だけど、私に向けられたその瞳は潤んではいるものの、涙がこぼれないよう堪えているように見えた。
日里さんは一体、何を言っているのだろうか。
茅人さんも、私と結婚するのは自分のはずだったと言っているし。
だけど結局、茅人さんは日里さんと結婚し、私は紬さんと入籍を済ませている。
それぞれに相手を想い、愛する人と結婚したはずだけれど。
私と茅人さんとの結婚話が持ちあがっていたとなれば、当初の計画とは違う展開を経た結果、父さんは事故に遭い大けがを負わされた。
ということなのだろうか。
そして、今回の事故がきっかけで、私が知らずにいた重要なことが次々と明らかになっている。
「紬さん……?」
混乱した気持ちを隠せないまま、小さくそう呟くと、それまで茅人さんや日里さんの話をじっと聞いていた紬さんが私を抱き寄せた。
「今更何をどう言ってもどうにもならない。っていうか、ようやく俺の嫁さんになった瑠依を手放すわけもないし、この幸せを諦めるわけないだろ? 瑠依は俺と一緒に生きていくんだ」
「紬さん……」
紬さんは、力強く私を抱きしめる。
日里さんに握りしめられていた私の両手は、一瞬にして紬さんの背中に回った。
そして、紬さんの胸に顔を埋め、くぐもった声をあげる。
「父さんの事故って、おじい様の後継者の座を望んでいる人が起こしたの? そして、私と茅人さんは結婚する予定だったの?」
「ああ。葉月グループのトップの座を狙っている常務一派が……面倒なことを幾つもやらかしてるんだ。
常務の息子と瑠依を結婚させて、葉月家との関係強化を図ろうとしていたのもその一つだ」
「常務の息子?」

