冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う





その時のことを思い返しながら話し始めた茅人さんの言葉に耳を傾けていると、突然病室の扉が大きな音と共に開いた。

「茅人っ。瑠依さんは大丈夫なの?」

荒々しい声が響き、その場にいた全員の視線が向けられた。

「は? 日里さん? どうしてここに」

「どうしてって、そんなの瑠依さんが大変だって聞いて……え? 瑠依さん、立ってる……」

驚いた声をあげながらも、つかつかと私の元に歩いてくる日里さんの表情は真剣そのもの。

慌ててやってきたのがわかるほど、息も荒い。

「あ、あの……?」

思わずあとずさりする私の目の前まで一直線。

紬さんと茅人さんが止める間もなく、日里さんは私の手を両手でつかむと。

「瑠依さんのお父さんが事故にあったって聞いたんだけど……瑠依さんは、一緒じゃなかったの?」

「は、はい、あの、私は一緒じゃなくて……」

「そ、そうだったの。茅人から連絡もらって慌てて来たんだけど、私のせいかもって思うとなんて言っていいのか」

「は?」

「私が茅人と別れられなくて、瑠依さんを後継者問題だかなんだかつまらない騒動に放り込んでしまって、ごめんなさい。それが事故の原因でしょう?」

私の手を握りしめたまま頭を下げる日里さんは微かに震えていて、泣いているのかと思えるほど。