いやいや、それはまずい。
気持ちを切り替えるように、私は小さく息を吐いた。
すると、私の気持ちなんてお見通しだとでもいうように、おじい様の口角が上がる。
「瑠依がここに来る前にな、結婚に向けて話を進めたいと紬くんから電話があったんだよ。
さすがはじいちゃんの孫だな。紬くんを仕留めるなんて、よくやった。
あんないい男、この先もう現れないぞ。
じいちゃんの初恋うんぬんは別にしても、結婚して幸せにしてもらえ。うん、それがいい、それがいい」
「そ、そんなあ……無茶だよ……」
「無茶なものか。じいちゃんの目に狂いはない。瑠依は紬くんと結婚して幸せになるんだ」
おじい様は自分の言葉に納得するようにははっと大きな声で笑う。
そして、呆然とする私の頭をくしゃりと撫でた。
その手の温かさに、ふと幼い頃を思い出す。
小さな頃、人が変わったように表情を失くしていく父さん、そして、葉月の家に呼び戻されたことがきっかけで、父さんとの仲に亀裂が生じて離婚した母さん。
両親が私を愛していたことに自信はあるけれど、私の存在だけでは両親の離婚を止めることはできなかった。

