「なんてずるがしこい策士なの」
大きく息を吐き、再び唇を尖らせ紬さんを睨む。
「知ってるか? 大切な女が拗ねる顔には、どれだけの財産をつぎこんでもいいほどの魅力があるらしいぞ」
「え? 知らない。誰がそんなことを言ってるの?」
「俺。だけど、事実だし」
「は?」
「特に瑠依は、おじい様や彩也子さんに気を遣いながら自分の感情は二の次で育ってきたから、今でも自分の行動や言葉に慎重になっているだろ?
そんな瑠依が俺にそうやって拗ねるなんて、萌えるよなあ。ひと財産つぎ込んでもいいって思う……いや、それは大袈裟か。
だけど修も、理美が姉貴ぶるのに疲れて、気を抜いて甘えた言葉を聞く度に顔が緩むって言っていたし、男って単純だよな」
「単純なら、もっとわかりやすく言葉をつないで欲しい。大切だとか言いながら、最後には私をまるめこむくせに」
そして私を好きに抱くくせに、と言いたい気持ちは恥ずかしさの方が大きくて口にはしなかった。
けれど、私の照れた様子は紬さんをさらにいい気持ちにしたようで、大きな笑みを与えただけだった。
「まるめこむなんて技は持ってないけど、ひたすら瑠依のことを大切にするし、幸せにする。それだけだ。……そんな気持ちは理美にも、あるんだ」
「理美さん?」
「ああ。理美にとってのその相手は俺じゃない。……それは」
「修さん、でしょ?」
確信に満ちた私の言葉に、紬さんはほんの少し、言葉を詰まらせた。

