「ああ。おじい様を見ていたから、俺がこの先背負う重荷を理解できるんだろ?
だから、自分のためではなく、俺のために生きていくことを選んだ。
やりがいを感じていた仕事も辞めて、俺に寄り添ってくれる」
じっと私の瞳を見つめ、低い声で言葉を続ける紬さんに、私は小さく首を横に振った。
「確かに、社長となって、大きな会社を背負っていく紬さんの大変さはわかってる。
きっと、私が想像しているよりもずっと大変だとも思う。
だから、私の体と時間は紬さんを支える為に使おうって思っているけど、それだけじゃないよ」
「……じゃ、何?」
「私、小さな頃から……特に、誘拐事件があってからは、常に誰かが側にいて私を気遣ってくれたけど、孤独を全く感じない時はなかったの。
私を守ることが義務であったり、おじい様のように、私の境遇を悲しむ人だったり。
単純に私を愛して側にいてくれる人はいなかった気がする」
「そんなことないだろ。おじい様だって、瑠依のことをちゃんと愛してくれているはずだ。
じゃなきゃ……」
驚いた声をあげる紬さんの口元を、私はそっと人差し指で遮った。
紬さんが言おうとしていること、私にも理解できるし、おじい様の私への愛情を疑うつもりもない。

