けれど、元来が自由奔放で、己の本能を制限することなく生きてきた父さんにとって、会社組織というものを受け入れることは困難だった。
そして、父さんの実家の財産や社会的地位には全く興味がなかった母さん。
絵を描くことしかできない父さんを愛し、支えていた。
そんな二人に愛されて、私の幼少時代はとても幸せだった。
けれど、父さんがおじい様の会社に入社して以降、ふたりの心は次第に壊れていき、愛する娘である私の存在をもってしても、それを止めることはできなかった。
父さんと離婚し、私とも別々に暮らすことを選んだ母さんの気持ちを考えれば今も胸が痛い。
その後、母さんを愛していた父さんが無表情になり、私のことを忘れてしまったかのように仕事に向かう後ろ姿の記憶は、今も私を苦しめる。
三人で幸せに暮らしていた頃に戻りたい。
母さんに戻ってきてもらいたい。
小さな頃、クリスマスに祈ることといえばそればかりだったけれど。
それが叶うことがないということも、わかっていた。
そんな私の気持ちを察していたおじい様もまた、自分を責め、苦しんでいた。
『瑠依の家族を引き離して、ごめんな』
私を抱きしめて、涙声で呟く声を何度も聞いた。
その度、私はおじい様に笑顔を向けて「瑠依は大丈夫」と言ったけれど、心のどこかでは『おじい様が父さんを連れ戻したりしなければ』という気持ちがあった。
そんな私は常に孤独を感じ、どんな場面でも、何かに怯え、そしてあきらめていたように思う。

