冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う





「瑠依は笑っているほうが、いい」

そう言って、掠めるようなキスを唇に落とす。

「……っ」

結婚して、甘い夜を過ごしたとはいっても、まだまだ恋愛のあれこれに慣れていない私。

一瞬にして体が跳ねた。

相変わらずにこやかに笑い、私を見つめ続けている紬さんを見つめ返すだけで精一杯だ。

幼い頃の苦しい出来事に今も尚乱され続ける私には、それをじっとやり過ごす以外に気持ちを楽にすることもできない。

いい加減、もう忘れたい。

犯人たちは逮捕され、私の前に現れることはないとわかっていても、その時に感じた恐怖に震えながら生きている。

「もう、大丈夫だ。俺が瑠依を幸せにしてやるし、修に任せるなんて論外だ」

小さな子供に言い聞かせるような紬さんの口調に、小さく笑い声をあげた。

「大丈夫だから、そんなに心配しないで。それに、修さんのことを何度言われても、会ったこともない人に自分を託そうなんて思ってない」

「ああ、会わなくていい。あいつは、むかつくほどいい男で……いや、それはいいんだけど、確かに頼りになる男だけど、瑠依は俺の嫁さんなんだから、会わなくていい」

「ふふっ。理美さんの弟さんなら、見た目の良さは確実だね。あれだけなんでもはっきりと言う彼女が誉めちぎってるくらいだから、頼りになりそうだし。あ……紬さんのいとこなら、結婚式で会えるのかな?」

「ああ、理美も修も来る。理美なんて、当日自分もお色直しがしたいだのふざけたこと言ってる、っていうか、母さんも式は和服だけど、披露宴はドレスを着たいからって昨日、ホテルに打ち合わせに行ってるし……どれだけ能天気な家族なんだ」

紬さんは、私を抱きしめたまま、大きく息を吐いた。