「おばあちゃんなんて、彩也子さん、まだ五十歳にもなってないのに」
「そうね。まだ若いと言えばそうだけど、でも、孫がいてもおかしくない年齢だもの。
さすがに出産するには難しい年齢だから母にはなれそうにもないし」
さらりとそう言った彩也子さんからは、憂いの感情は微塵も感じられない。
結婚したいと思う恋人もいただろうし、子供も持ちたかっただろうけれど、おじい様の秘書となったせいで、彼女の生活は私と父さんの世話に終始するものとなった。
私のお世話だけなら、家には家政婦さんもいたから彩也子さん自身の負担もそれほどではなかっただろう。
子会社へ移った父さんとおじい様の連絡係のような立場をも引き受けた彩也子さんの負担は相当なものだったはずだ。
おじい様の期待に応えられず、後継者としての道から外れた父さんのお目付け役さえ引き受けていなければ、彼女の人生は違ったはずなのに。
私だけでなく、父さんにとっても彩也子さんは頼りになる大切な人となり、子会社に移っても尚、不安定な精神状態だった日々の安定剤のような存在だったらしい。
彩也子さんがお正月休みや夏休みという長期休暇を取る時には父さんも休暇を取り、自宅に籠ることもあるというし。
私達家族は、どれだけ彩也子さんの存在に助けられているのだろう、そして、どれほど彼女に苦労を強いているのだろう。
今更悔いても、そして謝ったとしてもどうしようもないけれど、そう思わずにはいられない。
だからこそ、最近彩也子さんが綺麗になり、妖艶さすら感じる表情と口調で私に魅せるその色香に。
もしかしたら、彩也子さんは……。
と想像せずにはいられないのだ。

