「私と結婚する気なんて、な……」
『ないくせに』
そう言葉を繋ごうとした私の声を遮るように、江坂さんは。
「すぐにでも結婚してやるよっ」
まるでロビーにいる人全員に知らせるような大きな声をあげると、それまで美女に掴まれていた体を強引にほどいた。
そして、興奮した様子で立ち上がり、ずんずんと私の前までやってくると、そのまま私の腰に腕を回して抱き寄せた。
「ちょっと、何するのよっ。離しなさいよ……っん…っ」
慣れない着物を着ているせいか、自由に動けない。
江坂さんにぐっと抱き寄せられて逆らう事もできずにいると、途端に感じたのは唇の熱。
「んっ……」
体を強張らせ、まばたきもせずに彼を見ると、整った顔が真正面、それもかなり近くにあって。
まるで食べるような激しさで、私の唇にキスを落としていた。
「ちょ、ちょっと、……江坂さん……」
角度が変わる瞬間を狙って、顔を離そうとするけれど、後頭部を抑えられていると簡単にそれもできない。
江坂さんの思うがままに唇に熱が広げられて、気づけば差し入れられた舌は絡み合って、体中に熱が広がっていくようだ。

