冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う




結婚式を三日後に控え、当日に必要なものはほぼ用意できている。

といっても、この身ひとつで式場に行けばそれで大丈夫だというほど紬さんの準備は完璧だ。

現社長である紬さんのお父様は、紬さんと私のお見合いのあと早々に引退宣言し、社長という役職にはそのまま就いているけれど実務の多くを紬さんに譲った。

お父様も紬さん同様、生まれた時から「次期社長」という将来が与えられ、自分の望み通りに生きられる自由とは無縁の人生を歩んできたらしい。

けれど、紬さんのお父様は、幸いにも結婚相手としてお見合いの場で出会った女性と相思相愛となり、温かな結婚生活を送っている。

紬さんのお母様である奥様との結婚生活が順調だとはいっても、社長という立場上その身も時間も仕事に捧げなければならないことに変わりはない。

奥様を愛しているとなれば、奥様との時間をなかなかとれないことはとてもつらい事だったと思う。

そして、家族と過ごす時間を犠牲にして業務に邁進していた時間に区切りをつけ、紬さんに社長職を譲ると決めた。

奥様と二人で旅行をしたり、世間で話題になっているお店においしいものを食べに出かけたり。

若い頃には時間を作ることができず、諦めていた多くのことを楽しんでいる二人は、とても幸せそうだ。