「あ、あのね、紬さん……私」
とにかく、私は紬さんに愛情を持っていると、そう言いたくて口を開いた。
けれど、紬さんはどこか不安げで、寂しそうに口元を歪めたまま私の背中を撫でている。
その様子に、自分の気持ちをどう伝えればいいのか躊躇してしまう。
「なあ、瑠依? 俺との結婚は予想外のことだろうけど、俺を受け入れてくれないか? 瑠依を大切にするし、不幸にはしないって誓うから。俺から逃げださないでくれ」
その瞳には真摯な思いが溢れていて、私を大切にしたいという言葉に嘘はないとわかる。
不幸にしないという決意にも自信がうかがえ、今までにない強い口調からは、私が電話に出なかったことがよっぽど不安だったのだろうとわかる。
紬さんにとっても私との結婚はおじい様と紬さんのおばあ様が決めた不本意な結婚だ。
愛する人と幸せな家庭を築く夢をあきらめなければならないのに、そのことは二の次にして、私を不幸にはしないと言ってくれる。
会社を背負って生きなければならない彼の、強くならなければならなかったこれまでの日々をも感じたような気がして、切なくなった。
「小さな頃よりも笑って過ごせるように、大切にしてやる。決して不幸にはしない」
私をそっと抱きしめ、耳元にそうささやくと。
「だから、俺の側にいろ」
紬さんの思いが私の体に注がれた。

