私の言葉にどこか残念そうな表情を浮かべているのは気のせいだろうか。
まあ、お互いに乗り気ではないお見合い相手だし、いいか。
私は、相変わらずソファの背もたれに体を預けてふんぞり返っている男にわざとらしいお辞儀をして。
「じゃ、二度と会う事はないと思いますけど、お元気で」
目を合わせる事もなく挨拶を済ませ、くるりと向きを変えてその場を去ろうとした途端。
「あ、紬?こんなところでどうしたの?」
その場に女性の高い声が響いた。
「げ」
という江坂さんの声が聞こえ視線を向けると、彼は不機嫌そうに顔を歪め、私の背後を見ていた。
その視線をたどって振り返ると、茶色の長い巻き髪を揺らして、こちらに向かってくる綺麗な女性が目に入った。
ハイヒールを履いた綺麗な足を見せびらかすような短めのフレアスカートが似合う彼女は、迷うことなく江坂さんのもとにやってきた。
「紬、久しぶりね。何度も連絡したのに、どうして返事をくれないの?」
江坂さんが座っているソファの横に当たり前のように腰を下ろすと、その体をぴったりと寄せた。
江坂さんの腕に乗せられた彼女の手は、まるでそれが自分のものであるかのように江坂さんの腕を撫でまわし、くっきりとした赤いルージュがひかれた唇は触れ合うばかりの距離で彼の頬に近づく。
「会って話がしたかったのに。紬の仕事が忙しいのはわかってるけど、それでも私の為に少しくらい時間を割いてくれてもいいじゃない」
その女性は、更に江坂さんに体を押し付けて、豊かだとわかる胸の弾力を知らしめた。
「なんの話か、わかってるわよね?」
凄い……。
ここまであからさまに男性に自分の気持ちをさらけ出し、自慢に違いない体を武器にするなんて。
よっぽど彼の事が好きなんだろうとわかる。

