「俺のおばあはお前のことを『絶対に気に入るから』って自信たっぷりだったんだけど」
「あの、お前じゃなくて、ちゃんと瑠依っていう名前があります。それに、そのおばあって一体誰ですか?勝手にいろいろ言われても、私には何がなんだかわからないんですけど」
「わからないって言うけど、わかろうともしないままここに来たくせに。どうせ、おじい様が決めた相手なら誰でもいいんだろ?だとしても釣書くらい見てこいよ。俺でも一応は見て来たぞ」
「あ、釣書……」
そう言えば、開くこともせずに部屋の片隅に放り投げたままだ。
おじい様は呆れていたけど、どちらにしてもお見合いをさせるって張り切っていたから無理矢理見せようともしなかったっけ。
「どうせ部屋の片隅にでも置きっぱなしで見てないんだろ。帰ったら、俺のこの整った顔、写真よりも実物の方がいいって確認しておけ」
ここまで強気で自信に満ちた言葉を平然と言えるなんて、ある意味素晴らしい。
確かに女性にもてそうな整った顔で、少しどころかかなり強引な口ぶりは、それが好みの大勢の女性の心を震わせてきたんだろうな。
口が悪くなければ好みなのに。
ふとそう思い、こんな無理矢理に決められたお見合いの場ではなくて、偶然出会っていたら、私の心は揺らされていたかもしれないと、どきりとした。
「どうした?俺に惚れたか?見合いをすすめてもいいと思ったか?まあ、しばらくは俺のことを知ってもらうために付き合ってやってもいいけどな。結婚はそのあとでいいし。とりあえず婚約だけはしておくか」
くくっと笑う目の前の男は、まるで私の心をそのまま読みとったように私を見つめて意地悪な声をあげた。
はあ。
一気に疲れを感じた私は、遠慮せずに大きくため息を吐いた。

