授業中、先生の言葉はほとんど耳に入ってこない。私はとある事に夢中になっていたから。

黙々と描いているノートは授業ノートなんかではなく、落書きノート。実は私も小さい頃からイラストレーターになるのが夢だったんだ。だから太喜の夢を応援できる。

(うわぁ… この人初めて描くけど難しいな…)

隣の席の男子を観察しながらスケッチをとる。男子は授業に集中しないで消しカスで遊んでいるからか、全く私に気づかない。

「ハイ、ここテストに出るからしっかり復習しとけよー‼︎ ってお前は何やってんだ?」

パシン という軽く何かを叩く音が聞こえてきたため、私はビクッとして顔を上げた。そうしたら太喜が怒られていた。

「後ろばっかり見てそわそわして。後ろに何かあんのか?もしかして好きな娘か?‼︎」

「なっ////// ち、ちげーよ‼︎」

顔を赤らめて先生に反抗している太喜の顔にはあからさまに好きな娘がいます!って書いてあった。

ギュッと胸の奥をキツく締め付けられる様な痛み。それと同時にもう太喜の顔を見たくない思いでいっぱいになってしまった。

(どうしよう。太喜に好きな娘がいる…
嫌だ。見たくない。イヤイヤイヤ)

そこから後の授業の記憶はほとんど無かった。ただ、今もなお続くこの痛みだけはしっかりと覚えている。